6. 授業の反省と課題

 11月初旬から中旬にかけて、3年生160人4クラスに授業を行った。三つの歌の中から「さらわび」の歌を選んで鑑賞文を書いたのは47人だった。授業後ワークシートを提出させ、学習状況を調べてみた。すべて1時間終了後の結果である。

(1)
書かれたものへの評価

     生徒がワークシートに書いた文章は、それぞれ次のような観点で評価してみた。

    1. 「石ばしる垂水のうへ」「さわらびの萌え出づる」「かも」の意味が訳された現代語訳がなされているか。

    2. 「石ばしる垂水のほとり」「さわらび」「萌え出る」のすくなくとも三つの景色が書かれているか。

    3. 「かも」に目をつけ、春を見つけた喜びの気持ちを発見できているか。

    4. 歌への感想、印象が書けているか。

    5. ワークシートの2から4の読み取りが、持続の言葉を工夫しながらひとまとまりの文章にまとめられたか。

     二人の国語の教師がそれぞれこういう観点から書いたものを三段階に分けて評価してみた。上に挙げた評価の観点を全部満たしていれば「○」、観点の内の一つが抜けていたり、表現が足りないものであれば「△」、読み取りがまったく間違っているものや無回答のもの「×」という判定をした。
     「○」と判定された読み取りは、さすがに成績上位の生徒に多かった。しかし、決して成績上位者ばかりでなく、中からそれ以下の子でも、きちんとした読み取りのできている生徒のいることがわかった。和歌の口語訳、かかれた情景を思い浮かべること、作者の感動をとらえることは、用意された問題を考える中でわかったようである。しかし、自分の感想を持つことが下位の生徒ほどできなくなってくる。これは文章に書くことだけを要求せず、気持ちを箇条書にさせてもよいし、選択肢で自分の感想に近いものを選ばせてもよかったと反省している。このレベルの生徒達は一斉授業の中で自分の力で和歌の鑑賞をすることはほとんどないといってよいだろう。数は少ないが、この学力の生徒達が自分の力で和歌の鑑賞が自力でできるようになるだろう事がわかったし、コンピュータが鑑賞指導に使えることも証明された。
     私はこの学年の生徒達を、普通の授業では全然教えたことがない。従って生徒の成績等について先入観はない。そういう状態で書かれた鑑賞文を読んでいると、この子は成績のよい子だなとか、この子は余りできのよくない生徒だといった普段の成績の差が浮かんでこないのが印象的だった。それぐらい書かれた内容に極端な差が見られなかったといえる。しかし、けっして規格品ができあがっているというわけではない。その子ならではの個性的な読み取りが多くの文章にみられた。それだけ歌への理解が確実に行われたことがうかがえた。

(2)
生徒の書いた文章例

     生徒の書いた文章を実際にあげてみることにする。A、Bは成績上位のもの、Cは中位、Dは下位のものである。

      ◆ A、Bの文章例

      ◆ C、Dの文章例

(3)
生徒の感想

     和歌の鑑賞の授業への感想を書いてもらった。内容を分けると大きく四つになった。以下生徒の感想を引用しながら授業の様子を分析してみたい。


  1. とてもよくわかった。これからもコンピュータを使った授業をしたい



  2. 自分のペースで進められるのでよかった



  3. もっとキーボードを使いたかった



  4. 生徒からの要望



  5. おもしろくなかった、わかりにくかった