5. コースの特徴

◆このコースの特徴をまとめてみると次のようである。◆

(1)
読みを深めるために書くことを取り入れたコース

     コンピュータを利用するといっても、ノートを使用しないわけではない。和歌の解釈や鑑賞を深める手だてとして、ノートに書く場面を多く設定した。例えば、和歌を視写する、現代語に訳してみる、情景を想像して書く、作者の感動を書く、和歌への自分の印象や感想を書くなどの活動である。和歌の理解がきちんとできることは表現の充実につながると考え、読み書き関連指導をこのコースで取り入れることにした。教師はワークシートに書かれた文章を読んで生徒の読みの確かさや、鑑賞の深まりを見ることにした。

(2)
発問で生徒のイメージを喚起するコース

     情景を思い浮かべさせるために「作者の目にはどんな景色が映っているでしょうか。情景が目に浮かぶように、文章に書いてみましょう。絵を書くときのように、近景、中景、遠景と目をひろげて入って下さい」という問題を掲示する。すると、今までの学習からすぐその情景を想像できる生徒もいるだろう。しかし、イメージがわかない生徒には次に、「作者が目にしているものを歌の中から拾い出してみると、次のようなものがあるね。『しぶきをあげている滝』『滝のほとり』『芽を出し始めたわらび』、まずこの三つは入れましょう。」「萌え出す、という語の響きから、あなたが感じるものはありませんか」というように、目の付けどころを発問によって誘導しながら発見させることにした。

(3)
必要な資料を引き出せるコース

     生徒が鑑賞を進めるに必要とする資料は、その子その子によって違う。また一度見れば用の足りる子もいるし、繰り返し同じ資料を見る子もいる。そこで、学習途中みたい資料があったら、特別なキーを押すといつでも必要な資料が引き出せるようにした。言葉の意味、情景を想像する手だてなどを資料として入れた。

(4)
生徒個々の理解と進度に応じて学習を進められるコース

     生徒が和歌の鑑賞を進める速度には大きな差がある。生徒が、和歌の読み取りに必要な資料を探し出し、自分の読み取りをまとめ、鑑賞文にまとめるまでの作業は時間も、学習の筋道も、一人ひとり大きく違う。従って本来は、学習履歴によって複雑に分岐して行くコースが必要なのだが、今回はそこまでのコース作りができなかった。治療コースの不十分さが予想されるが、メッセージ情報を細かいものにし正解に導くことにした。
     一斉授業であれば、友だちの書いたものを読み合い、自分の書いたものを加除修正できるが学習の進度に差があるので、コースの中に教師が書いた文章を用意し、比較させた。自分にはない鑑賞の視点、読み取りの観点を見つけ、自分の鑑賞に加えられればこれも鑑賞の広がりといえると思う。但し、教師の鑑賞の押しつけになったり、生徒が自分の読み取りを帳消しにしてしまうことがないように注意したい。
▼和歌の鑑賞コースの概要
┌───────────────┐ │  和歌の読みの練習をする  │ └───────┬───────┘ ┌───────┴───────┐ │意味のわからない言葉を調べる │ └───────┬───────┘ ┌───────┴───────┐ │   和歌を現代語に訳す   │ └───────┬───────┘ ┌───────┴───────┐ │ 情景を想像し、文章に書く  │ └───────┬───────┘ ┌───────┴───────┐ │  作者の感動を文章で書く  │ └───────┬───────┘ ┌───────┴───────┐ │  表現の特徴を見つける   │ └───────┬───────┘ ┌───────┴───────┐ │    鑑賞文をまとめる   │ └───────────────┘