3. 鑑賞指導に使う和歌の選定


 和歌といってもその中には、長歌、短歌、施頭歌、仏足石歌などがある。ここでは短歌を扱うことにした。和歌の中でも出てくる率が一番高いからである。また本校で使っている教科書に出てくる短歌は、「万葉集」「古今集」「新古今集」からとられ、時代も違えば表現の仕方も違ういくつかの歌を学習することになっているが、和歌の鑑賞の基礎を学習するコースなので、取り上げる歌を次のような基準で別に選んだ。

  1. 描かれた情景が絵画的で、生徒がイメージをしやすいもの。

  2. 技巧に走りすぎず、歌の意味がとらえやすいもの。

  3. 作者の感動がとらえやすいもの。
 そこで、「万葉集」から、持統天皇の歌で「春過ぎて夏来るらし白たへの衣ほしたり天の香具山」、柿本人麿の「東の野にかぎろひの立つ見へてかへり見すれば月傾きぬ」、志貫皇子の「石ばしる垂水の上のさわらびの萌えいづる春になりにけるかも」の三首を選んだ。
 「さわらび」の歌は題詞に「よろこびの御歌」とあり、新春の賀宴や官位昇進の折に歌われたものだそうだが、生徒には表現に添って情景を思い浮かべさせ、早春の滝のほとりに芽をだした蕨を見つけたときの作者の感動を発見させることにした。
 私はこの「さわらび」の歌の鑑賞コースを作成したので、以下そのことについて述べる。