2. 主題設定の理由

(1)教育目標の具現化を目指すために

     本県教育目標「ひとりひとりの能力を開発し、豊かな人間性を培う。」「じょうぶな身体をつくり、たくましい心を養う。」「郷土を愛し、協力しあう心を育てる。」 を受けて本校では「民主的な国家並びに開発されていく地域社会のよき形成者として、また国際社会の中で信頼と尊敬の得る日本人として、知、徳、体、の調和のとれた人間性豊かな生徒を育成する。」を目標に取り組んでいる。
     知識の中であげられている「自ら考え、主体的に学習できる生徒の育成。」は、生徒個々の能力、適正を十分把握し個に応じた学業指導を通して、修学度の高い生徒を育成することである。


    <これからの情報化社会の中で生きていく子供たちのために>

      コンピュータも第4世代から第5世代と言われている今日、情報化社会をめざましく発展し、家庭用コンピュータを通してネットワークシステムから情報を導き出すことができるようにもなった。マイクロソフトを使った電気製品が当たり前となった今、後10年もすればコンピュータもコンパクトになり、授業の中で、ハンディコンピュータを使ってノートをとるなどと言うことも夢ではなくなるであろう。コンピュータで管理された職場が当り前となり、それぞれの職場がネットワークされている。そういった社会に巣立っていく子供たちは、コンピュータを避けて通ることができなくなるであろうし、また逆に、コンピュータ分野に興味をもってその方に進路を決める場合もあるだろう。コンピュータを活用しコンピュータにたいする免疫がしっかりついた状態で義務教育を終了することがわれわれの使命となってくるであろう。


    <自ら考え、主体的に学習できる生徒の育成>

     自分の必要な情報を自分で選び自分で学習できる生徒を育成するためには、コンピュータを利用することが一つあげられるであろう。コンピュータ自体、生徒が持っている興味は高く、意欲的な取り組みも期待できる。またそれは、学習に対する意欲にもつながり学習体制の定着になる。コンピュータを使い楽しく学習できることが、生徒の内面を響かせることになるであろう。しかし、コンピュータにだけ頼った教育は、自ら考える状態を摘んでしまい、主体的な学習は望めないであろう。コンピュータも教具の一つであり、生徒が主体的に学習できる活用のあり方を考えて使うことが大切である。

(2)生徒の実態から

    <本校の生徒は絵画と対話する機会が少ない>

     本校は1年4クラス、2年4クラス、3年4クラスの総12クラス、生徒総数約460名の小規模学校である。回りが農村地区で囲まれている反面、近くには研究学園都市があり、落ち着いた環境の中にありながら情報社会の影響を受けやすい環鏡でもある。また、生徒のほとんどが農村地区に住んでおり、のんびりした家庭環境の中で学習を取り組んでいる。色彩に対する刺激を受ける機会も余り多くなく、テレビや雑誌からの影響が多いようである。また、近くに、美術館などもなく、親と一緒に土浦市や、東京の美術館まで足を伸ばして鑑賞に行く生徒もほとんど見られないのが実状である。生徒が、鑑賞できる作品は、文化祭等における作品の展示であり、他校の生徒作品であったり、画集の中の作品である。そういった環境の中で、色の名前を少ない場合でも10色、多い場合では24色答えることができるのは、小学校からの美術教育の中で習慣として使用してきたためと思われる。


    <色彩学習の事前調査からみられる生徒のようす>

    [生徒は経験で色の種類や性質を知っている]

     しかし、いざそれらの色がどの様な仕組で関わりあっているということになると、曖昧な答えになってしまうのであるが、事前調査を行ってみると、赤、青、黄色、などの簡単な色に白を混ぜるとなに色ができるかや、白と黒を混ぜると灰色ができることなど、利用回数の多い混色はそれまでの経験から学習ができている。しかし、明るい色が黄色や、水色など明度の高い色有彩色で答えることができるのに対して、暗い色を黒や灰色など無彩色でしか答えられない、偏った色彩経験をしているのも見逃せないのも事実である。また、明るい色については、赤やだいだい色、ピンクなど暖色系の色を答えられる生徒が多いのに対して、寒色系の色については、白と答えている生徒が多いなど無彩色で答えることが多いことからも同じ様なことがあげられる。生徒は、明るい色、暖かい色、軽い色などある意味で目だちやすい色についてはよく学習できているが、暗い色、重い色など明度、彩色の低い色についは、学習ができていないことなどからみてあまり関心を持っていないようである。

    [ポスターをかくときには絵の具を混ぜないで使ってきた]

     混色については、「風景画を描くときに色を混ぜて使うことが多いですか」という質問に、混ぜて使うことが多いと答えている生徒が大部分であるのは当り前として、ポスターになると色を混ぜないで使っていると答えている生徒が半数近くもいることは、混色したもので大きな面積を均一に塗ったことがない生徒がずいぶんいるということになる。

    [きれいに色を塗りたいと思うが、色を塗るのは嫌いだ]

     また、ポスターなどをかいたとき下書きのままの方がよかったと答えている生徒がかなり多く、彩色についてはかなり苦労していることが伺えるが、その反面色を塗るのが好きであると答えている生徒が半数もみられる。その理由として一番多かったのが「色を塗った方がきれいだから」といいうように色彩の美しさを感じている生徒が多いのも救いであるような気がする。また、色を塗るのが嫌いと答えた一番の理由は「塗ったために色がはみ出て汚くなる」「面倒くさい」であった。生徒の半数が、彩色について劣等感を持っていることになる。

    [コンピュータは遊びになら使ったことがある]

     コンピュータの経験については、パソコンが家にないためほとんどの生徒がファミコンのみあるいは、お店でということであり、コンピュータに関心がある生徒も「ゲームが作れるから」と遊びに偏っている。しかし、中には、文章をうってみたいという女子もおり日用的な目的でコンピュータを考えている生徒もいるようである。
     これらのことから、色彩の扱いについては、より楽しく学習できることが学習向上の第一の要因となり、以前から使われている体験的な学習はそのまま生かし、新しく、学習意欲のための引金が必要になってくるはずです。そのことによって、色彩の基本的事項の定着が可能になってくるはずである。