1. はじめに


 美術の授業にコンピュータを取り入れたのは、去年の研究発表からである。
 印象づけることが難しかった色彩の学習を楽しくできるものとしようとしたのがきっかけである。コンピュータにさわるのも初めてであったから、本当に、授業ができるであろうか、という不安がいつもつきまとっていたが、生徒たちがモニターを食い入るようにして見るその姿を見て、可能性を感じたのもついこの前のような気がする。しかし、美術の授業にコンピュータを導入することを批判的に見ている教師も多いはずである。本来、美術の制作活動はハンドメイクを主にするものであり、漫画アニメやファミコン部類のコンピュータを使えば、かえって悪影響だろう、というのが大方の意見であろう。実際、生徒の創造性は自然からはなれがちであり、作品の中に漫画アニメの影響を認めないわけにはいけない。しかし、そういった現実とコンピュータを使うことを同一視することは、余りにも乱暴である。コンピュータはあく までも機械であり、道具である。問題はそれをどう利用するのかということであり、教師の姿勢なのである。コンピュータを美術学習から離して考えるより、CG(コンピュータグラフィック)やシミュレーション(模擬映像)、情報バンクの能力を授業の一助としてどう使えば美術離れした生徒たちがいかに楽しく取り組めるかを考えることが大切であると思う。また、コンピュータ利用から、生徒一人一人の能力に応じた助言をすることを可能にするために、

1. 十人十色の個性的な活動ができるよう予想される質問事項に対し、いくつかの応答を用意しておき、生徒が自分に合った配色計画をする場を設定する。

2. 生徒の能力に合わせ、色彩の学習に幅を持たせることで、自主学習として色彩感覚向上の場を設定する。

3. コンピュータの指示どうりに制作するのではなく、必要な情報を収集しながら制作することができる場を設定する。

 など、自然な形で学習展開ができるようにしたいと考えている。これによって、教師の柔軟な指導と、コンピュータからの情報提供の二面から同時にバックアップできるのである。
 また、教育課程審議会答申に示されていた改善の基本的なねらいの中に、表現制作に役立つ情報を収集し活用する能力を育てるというのがあり、21世紀を担う人間の育成を唱っている。すでに、情報化社会といわれている今日、要求されるのは、いかに自分の必要とする情報を引き出し利用できる能力である。学年目標の改善の視点の基本的な考え方では、答申に基づき生徒の発展段階を明確に押さえることがあげられており、第1学年では、小学校図画工作との関連を図り基礎事項の定着を重点としている。そういった目標を、具体化する一助としてコンピュータを利用し、より効果的な利用方法を考えていきたい。