◆かくした数は、いくつ?◆

学年:小学校3年生 (平成元年指導要領では2年生)
教科:算数
単元:大きな数(1万までの数)



1. コースウェア作成の意図

(1)「数の系列」と「数直線」の扱い

 小学校の学習指導要領の中で、「数の系列」や「数直線」の取り扱いについては1年生に書かれているだけである。そこには、「ウ 数の大小及び順序について知り、数の系列を作ったり数直線の上に表わしたりすること。」〔A 数と計算 (1)〕とある。しかし、「数の系列」や「数直線」は、数の仕組みや数の大小、順序を知った上で、数の並び方の規則性や、直線上に一定間隔に目盛られた点と数との対応関係などにも目を向けないと理解できない内容といえる。それだけに、1年生にとっては抽象的で難しいものと考えられる。それを、なぜ1年生から扱うのだろう。
 低学年では、具体物を用いて個数や順番をあらわしたりする操作活動を通して数の概念を身に付けていくことが大切である。しかし、数の範囲が1万まで広がる2年生の終わりには、具体的な操作活動は困難になってくる。そこで、1年生の早い段階から、「数の系列」や「数直線」を扱い、数の大小の関係や順序をとらえやすくさせようとしていると、考えられる。確かに、数直線は、数の大小や順序を明確にあらわす機能を持ち、具体から抽象への仲立ちをする一つの手だてとなりうる。では実際に、「数の系列」や「数直線」を、ゲームなどの操作活動と関連づけながら扱っているのだろうか。

(2)1年生の教科書での扱い

 そこで、算数の教科書はここをどう扱っているのか、手元にある1年生の教科書5種類を調べてみた。
 教科書に出てくる「数の系列」は、5種類ある。1、2、5、10ずつ増える場合と1ずつ減る場合である。そのうち、どの教科書も扱っているのは、1ずつ増える場合と減る場合だけであった。5と10ずつ増える問題も4つの教科書が取り上げている。中には、「23−33−□−53・・・・というような難しいも問題もあった。しかし、「□には どんな かずが はいるでしょう。」と書かれているだけで、具体的な操作活動のヒントとなるような絵や記述は見あたらなかった。
 一方、「数直線」は、一目盛りが1の場合だけである。数の範囲は、0〜20までと0〜120までの2通りが多かった。扱い方は、印をつけた目盛りの数値を聞いたり、逆に数値の場所を目盛らせる問題を解くものばかりだったが、すごろくゲームと数直線を関連させ操作活動を取り入れるよう考慮した教科書も1つあった。
 このように「数の系列」や「数直線」の扱いは、教科書の少ない問題を解くことですませてしまう傾向が強いことがわかる。これでは、抽象的思考の困難な1年生に、学習指導要領に示された内容を理解させることは無理だろう。ましてや、算数科の目標とする「数理的な処理の良さがわかり、進んで生活に生かそうとする」ところまて達成できないだろう。従って、指導する場合には、数字の並び方の関係や、等間隔に目盛られた点と数の対応関係に目を向けられるような具体的な操作活動を取り入れる必要がでてくる。またそうした指導の後で、ドリルによる定着を図ることも大切である。

(3)2年生以降の教科書での扱い

 それでは、「数の系列」と「数直線」の扱いは、2年生ではどうなるのか、さらに、教科書を調べてみた。「数の系列」の問題は、2や5ずつ増える並び方と、1ずつ減る並び方はなくなる。そして、1と10の他に100と1000ずつ増える並び方が加わる。その並び方でできる数の系列の問題は、2年生が扱う数の範囲内で7通り考えられるが、どの教科書もすべて網羅しているわけではなかった。4通り扱うものが一番多く、7通り全てを扱っていたのは1つだけであった。それに、問題数も十分とは言えない。
 「数直線」は、一目盛りが1ずつの他に10、100、1000のものが出てくる。これも「数の系列」と同じように7通りの問題が考えられるが、教科書によって扱い方にばらつきがあり、全てを扱っているものはなかった。また、問題としての扱いよりも、数の大きさや概念を理解させる目的で使われることが多くなる。
 教科書が「数の系列」の問題を扱うのは、2年生から3年生くらいまでである。もう一方の「数直線」は、2年生以降、数の範囲が、千からだんだん万、億、兆と広がっていく過程や、3年生以降、小数や分数の学習を進める過程で、数の大きさや概念を理解させる手だてとして繰り返し使われていくことになる。また、「数直線」という用語は3年生で習う。

(4)コースウェア作成の意図

 教科書では、2年生までに「数の系列」の基本的な形が出そろう。また、学年が進むに従い「数直線」の表わす意味を理解する力が必要になる。従って、2年生の終わりまでに「数の系列」の規則的な並び方の見方や、数直線の目盛りと数との対応関係を理解していることが大切になる。もし、できていないと、その後の学習に支障を生ずることが十分考えられるからである。
 そこで、10進法などの数の概念がはっきりしてくる2年生の終わりにドリルで定着を図ることが有効であろうと考えた。そして、ドリル型のコースウェアを作成することにした。そしてコースウェアは2年生の範囲までの学習内容を総合的にまとめて与え、子どもたちに確実に定着させる方向がよいと考えた。

(5)「かくした数はいくつ?」のコース設計

 まず、2年生で学習する数の範囲で考えられる「数の系列」と「数直線」についての目標分析を行った(「V、目標分析」を参照)。そして、目標に沿った問題を作ったところ、メインのコースだけでも130題を超える結果となってしまった。
 2年生の3学期にやるコースではあるが、130題を超えるドリルは子どもにとって、抵抗が大きいと予想される。そこで、子どもの学習意欲を継続させる一つの手だてとして、ゲーム的なアプローチを試みることにした。それは、子どもが、数字の国でいたずらをしているカラスから数字をとりもどし、カラスを捕まえるという設定である。そして、治療以外の問題を1回で解けた場合に、カラスが捕まるようにし、その数をカウントすることにした。そのほかにも、その捕まえた数を自分のプリントに記録し、それを先生に認め励ましてもらう場面を設定し、学習意欲の継続を図った。そして、文章を読み取る苦労を減らすために、できるだけ文章を簡潔するように心がけ、グラフィックによる補足を有効に行うようにした。

(6)コースウェアの問題パターン

 教科書にある数の系列や数直線に関する問題をその出題形式によって分類すると大きく次の3つに分けられる(それぞれの型の例は下図参照)。そこで、コースウェアの問題も、下の3通り型を用意した。

1. 数列型の問題・・・・・・ 数字を並べ空欄を問う問題。
2. 数直線型数列の問題・・・ 数字を並べ空欄を問う問題で、数直線もあわせて示されるもの。数直線への移行を意図したものと考えられる。
3. 数直線の問題・・・・・・ 数直線を示し、その線上の数を聞いたり、ある数の位置を示させる問題。

(7)キャラクターの使い分け

 同じパターンの問題が何題が続くため、画面左上すみにパターンを置いて、教師が画面を見たとき学習者がどのブロックにいるのか分かりやすくした。
問題ブロック・・・・・・カラス
治療ブロック・・・・・・3じ博士
確認テストブロック・・・パソ君

2. 保証される学習の成果(達成目標)
3. 前提条件
4. 教育目標(下位行動目標)

(1)教育目標A・B

A−1 一つずつ増えていく数列のきまりを見いだし、空欄に数を記入できる。
A−2 10ずつ増えていく数列のきまりを見いだし、空欄に数を記入できる。
A−3 100ずつ増えていく数列のきまりを見いいだし、空欄に数を記入できる。
A−4 1000ずつ増えていく数列のきまりを見いだし、空欄に数を記入できる。
B−1 5つずつ増えていく数列(3桁まで)のきまりを見いだし、空欄に数を記入できる。
B−2 一目盛りが1ずつの数直線上に数を記入することができる。
B−3 一目盛りが10ずつの数直線上に数を記入することができる。
B−4 一目盛りが100ずつの数直線上に数を記入することができる。

(2)発展目標

C−1 2つずつ増えていく数列(2桁まで)のきまりを見いだし、空欄に数を記入できる。
C−2 一つずつ減っていく数列(4まで)のきまりを見いだし、空欄に数を記入できる。
C−3 10ずつ減っていく数列(4まで)のきまりを見いだし、空欄に数を記入できる。
C−4 100ずつ減っていく数列(4まで)のきまりを見いだし、空欄に数を記入できる。
C−5 一目盛りが50ずつの1000までの数直線上の数を記入することができる。

5. 応答カテゴリー

(1)数の系列の場合

(2)数直線の場合

(3)応答カテゴリーによる治療

 診断テストの結果、上記の応答カテゴリーがありそうだと考えた。応答カテゴリー1、2、9にあたる誤答は解答全体の中で高い傾向を示したが、ほとんどの場合、メッセージ(KR)により誤りに気付かせることができると考え、応答カテゴリーによる治療は設定していない。
 治療コースは、それぞれの問題をスモールステップ化して与える方法で作ってある。数の系列の場合は、いくつずつ増える(減る)並び方か確認し、その決まりで従うと答えはいくつになるか考えさせるようにした。また、数直線の場合は、数直線の一目盛りはいくつかを確認し、その増え方で目盛りを数えさせるようにした。どの誤答パターンの場合にも、最終的にこの方法で解決できると考えている。

6. 「先生をよびなさい」の設定

(1)「カラスのプリント」のチェック

 学習の過程でつかまえたカラスの羽数を子どもたちに掲示し数直線上に記録させるようにした。そのねらいは、数直線上の目盛りを読み取るだけでなく、示された数を数直線上に記入できるか見ることと、学習の過程を先生に認めてもらうことの2点である。
 カラスのプリントに記入する場面は、(1)レディネスの診断終了時、(2)数の系列のテスト終了時、(3)数直線のテスト終了時、(4)コース終了時の4回あるが、そのうちコースの中間の(2)と、終了時の(4)で全員の子どもが先生のチェックを受けるように設定した。カラスは、試行1回目の正答でつかまる設定になっているので、その羽数を見れば、その子どもの大まかな学習状況を把握できる。それを参考にして適切な励ましの言葉を期待したい。なお、全問1回で正答してきた場合には、(2)までで75羽、(4)まででは、136羽になる。

(2)前提条件の指導

 このコースウェアの前提条件にかかわる治療は、ほとんど用意していない。従って、それにあたるもののほとんどは先生に指導してもらう仕組みになっている。この場合、「先生と一緒にやってみましょう」という指示が出るので、その子どもと一緒にやりながら適切な指導をお願いしたい。

(3)治療ブロックの確認問題

 治療が生きていれば、確認問題は試行2回以内にできるだろうということで考えてある。同じ問題を1度やり直させても、完全にできない場合に先生を呼ぶようにしてある。その場合、その子どもに同じ問題をもう一度考えさせながら一緒に見てもらうのがよいと思われる。

7. SST変数の利用目的

8. フローチャート
9.ワークシート